青?裸々な日常
2008年2月1日~
第148号  王先生のブレスレット。


2月1日(金) 紹介。
昨年10月初め、『鶴瓶のらくだ』ツアーの音楽をやることになり、鶴瓶さんにお会いした。初対面。ごあいさつしたとき、お弁当を持った鶴瓶さんは「あ、こんなカッコですんません、どーぞよろしく」とおっしゃった。 2度目か3度目のリハの時、「あのね、この弟子にね、お囃子を習わしてやりたいんですわ」と言われた。
調子の良い僕は「はいはい、良いお師匠さんいます、信頼できる人、お引き合わせをいたします」と、いつものようにサラサラと口から言葉が出ていた。あれから丸三ヶ月が経った。
ずーーっとひっかかっていたのです。あのお弟子さんに会うたびに「ゴメンネゴメンネ、都合がつかなくてね」といいわけをしてきた。
それがついに本日、無事にお引き合わせできたのでございます。いやぁ良かった良かった。間違いのない人を紹介したい。ホイホイと引き合わすわけにはいかない。師匠にもお弟子さんにも良い結果でありますようと思う。
そんなこんなを思っていた三ヶ月、はー、やっとホッとしたわ。がんばれお弟子さん。お師匠さん、うまい具合に仕込んでください。お囃子の師匠の稽古場は西麻布一丁目。引き合わせて、ひとり帰り道、六本木駅まで歩いた。

松永鉄九郎の始まりは、ここ西麻布一丁目だった。ウチの師匠が住んでいたから。20歳で内弟子に転がりこんだのがここだった。稽古場に住まわせてもらっていた。まだ、そのマンションはある。
外から窓が見える。六本木ヒルズができたりして西麻布も変わったが、変わっていない場所がたくさんある。僕にはわかる。28年前、確実に踏んだアスファルトはそのままだし、この塀も、カーブミラーも・・・・なにもかもが同じに見える。タイムスリップした気がする。
向こうから普段着の師匠が歩いてくる気がする。28年も経ったのかなぁ?時間の感覚ってわからないものだ。昨日のことのように覚えていることは、昔のこと。昔のことのように思えるのはさっき起こったこと。時間ってなんの意味があるんだろ?
まぁ、いい。あれから28年経っても三味線弾いてるんだから。あと何年かしたら、鶴瓶さんのお弟子さんは立派に太鼓叩いていて、噺家としてもみんなが知ってる人になってるかもしれない。
それか、まったく違う道に行ってるかもしれない。それが時間かぁ。過去を振り返ると時間の感覚がおかしくなるような。
時間は未来のためにあるのかなぁ。


2月2日(土) 「和」。
午後、スクハジのお稽古をした。彼女たちのライヴがあります。「毎月ライヴやれーー」と言ったら、ホントにやっていて。で、今月は長唄を一題入れることにしたのです。「外記猿」を。唄は、チャーリーのカミサンのナッチャンにお願いして。・・・あ、わかりづらいっすか?ウチの忠七郎さんの奥方の鉄文智さんにお願いしたのです。・・・・・余計わかりづらいっすか?ま、先月何回かなっちゃんにも来てもらってお稽古したのですがね、一応、今日で最終稽古ということにしました。長唄の難しいところ。それは合同演奏ってことですね。「こんな風に弾きたいんです」とか「こんなふうに唄いたいんです」っていうのを言い合うんじゃなくて、演奏中にやりとりするんですね。常に相手がいる。一緒に弾く三味線弾きにも「こうやって弾くよー」って持っていかなきゃいけない。常に相手と一緒に作ってるっていう世界だと思うんです。ま、義太夫だって清元だって常磐津だってそうですよね。 これがなんていうか日本文化の素晴らしいとこだと思うんです。常に「和」。ずーーっと「和」。うまくなっても「和」。下手だったらもっと「和」。和和和ーーが大事。
押してもダメ。ひねくれてもダメ。気を入れたら自分だけになっちゃうし、気を抜いたらなーんにも見えなくなっちゃう。そんなの最初からできるわけがない。だから経験するためになにかをやる。ライヴもそう。やらなきゃわかんない。ま、やってもわかんないけどね。やらなきゃ、ずーっとわかんない。何が? 「和」が。舞台に出てる人との「和」。お客様との「和」。長唄も経験。お客さまの前でやらなきゃ「和」が作れない。何度も何度もやると少し余裕が出来るから「和」を作れるようになるのかも。そうなのかな?そうだろうな。違うかな?どうかな?


2月4日(月) アイスクリームボックス。
東京にしては雪がたくさん降った翌朝。稽古場からのデッキが凍っていた。娘を呼び、キャッキャいいながらツルツル滑ってみる。
娘「雪が硬い硬いよ」
テ「ああ、フワッとしてそうだけどな」
娘「あのさ、アイスクリーム売ってるさぁ」
テ「そうそう、大丈夫わかった、みなまで言うな、言いたいことはわかった」
娘「・・・・なにさ?」
テ「あれだろ、アイスクリーム売ってるやつだろ」
娘「アタシが言ったのなぞっただけじゃない」
テ「基本だろ」
娘「基本基本・・・そうじゃなくて」
テ「わかってるって。コンビニとかのアイスクリームが入っている、あの上から開ける、中にジャイアントコーンが並んでいる」
娘「そんな細かく言わなくても」
テ「なっ!」
娘「そうそう、あの白いやつみたい」


2月6日(水)7日(木) 伝の会本公演。
えっ、雪じゃん。積もりそうじゃないけど雪じゃん。ちょいと早めに出発。荷物がたくさんだから車です。本公演初日。いつもの時間にお江戸日本橋亭に入る。相変わらず、雪がパラパラ降っている。とにかく邦さんと稽古。そのうち、客演のみんながやってきた。勝彦さん、六昶俉さん、三七郎さん。この三人が4回公演を唄ってくれる。昼の部は「完売」。なんて良い言葉なんだろ!!邦さんも僕も、やけに久しぶりだなぁと思ったら、日本橋亭でやる本公演って一年振りなんだ。ほほぉ、一年ぶりかぁ。しかし、ここのお客様はあったまってるなぁ。もう、伝の会を見る態勢になっているところがスゴイ。楽しい昼の部でした。夜の部までの時間に、また邦さんと稽古。そして、ちょいと昼寝。夜の部もあったまってるお客さま。無事終演。ふーー、「吾妻八景」「紀州道成寺」「四季山姥」「八犬伝」と4曲をやり遂げたぞっ! いばらなくてもいいやね。自分たちで決めたんだから。心地よい疲れが身体中を支配する。これが意外に気持ちが良い。これだからライヴはやめられない。


2月8日(金) 掛川へ。
8時に東京駅の新幹線ホームに着いた。雑誌と新聞買って、ボーっとしてたら、帽子を被りメガネをかけマスクをし、高価な赤いマフラーにベージュのコート姿の紳士が近づいてきて
「同じ車両か?」
と、かすれた声で言った。
「はい、喫煙席を取りました」
「・・・・」
黙って紳士の後について行き、10号車に乗り込む。そこで手渡されたのは、まい泉のカツサンド。
「はい、朝から異常に食欲のあるお前に」
「『歓喜の歌』の舞台挨拶も終わりましたね」
「ああ、やってしまえばアッと言う間だな」
「今日は寒そうですね」
「ああ、携帯の天気予報では、1℃って出てるからな」
「え、そんなに寒いんですか!」
「何時に着く?」
「10時ちょいです」
「えぇっ?」
びっくりした志の輔師匠。僕らは掛川に向かっている。今夜、掛川で『立川志の輔独演会』がある。その前にゴルフをしようというのだ。

掛川に着くと、見事に晴れている。なんとすがすがしい天気なんだ。
志「おー、いいねぇいいねぇ」
テ「天気でよかったですねぇ」
志「うーん、いいぞーー」
テ「テンション上がってますね」

迎えの車で葛城カントリークラブへ。エンボスの小山社長の運転だ。
志「小山さん、今度〇〇へ招待するよ、いいよーー」
小「ああ、是非に」
テ「お供しますよ」
志「お前のお供は怖いんだよ」
テ「どこへでも行きまっせー」
志「お前のお供はインターネット付だろー」
テ「書いてないですって(笑)」
志「もー、すぐいろいろ書くからなぁ」
テ「書いてないですよ、他にいるんじゃないですか?いろいろ書く人が(笑)」
志「それはいない。仕事も飲みも、こんなに一緒のやつはいない(笑)」

11時20分スタート。ホールに向かうとき、もうハーフを終わって上がってきたご婦人たちとすれ違う。
志「えぇっ?もうハーフしてきたのかなぁ、あの人たち」
テ「そうじゃないですか」
志「あ、そうか、もう11時30分だもんな。元気だねぇ、日本の女の人たちは」
テ「元気ですねぇ、いきいきとしてますものね。コースに出る前にパートに行ってたりしますね」
志「はははは、ゴルフのためのパートか」
テ「そう、ゴルフのパートじゃないんですよ」
絶好のゴルフ日和と素晴らしいコースに終始上機嫌の志の輔さんでありました。

一緒に回った方が記念に写真をというので
テ「師匠、『一枚写真を撮らしてください』って。みなさん並んでください」
志「人のせいにして、お前が撮ってネットに載せるんだろ、みなさん気をつけてくださいよ(笑)」
夕方に終了し、本日の会場へ。スゴイですなぁ、このまま独演会するんですものね。ま、いつものことですが。そして、志の輔さんは、満員のお客様の前に元気に出ていかれました。掛川のお客様は、今宵、志の輔らくごに酔いしれたのであります。


2月9日(土) 伝の会 本公演。
土曜日ですね。寒いですよぉ、今朝は。とにかく娘乗せて、お江戸日本橋亭へ。6日にやって中二日なんだけど、ものすごーく久しぶりな感じ。したがって、まずは、今日の演目の稽古稽古稽古。6日が遠い昔のようなんだものーー。寒い中、本日も満杯のお客様に来ていただきまして感謝感謝です。無事に本公演二日間/4公演を終わることが出来ました。あー、良かった良かった。来てくださった方たちありがとうございました。夜の部が終わったら結構な雨が降っていました。ちょいと寄っていくというので、乾杯だけでもとチラッと寄って、車なのでウーロン茶飲んで、あたたかいものつまんで、おなかも一杯になったんで、お先に失礼、っと外に出て驚いた。雪がジャンジャン降っている。しかも大きな雪。まちがいなく積もる雪。あと30分遅かったら車ダメかもというほどの雪。うわーーーー、車んとこ行くと積もってる積もってる。わーーーー、とにかく急いで帰ろう。いや、急いだら危ない。ノロノロで急ごう。雪はジャンジャン降ってくる。御茶ノ水のあたりになると、歩道には完璧に積もっている。だんだん、道路も危なくなってきた。がんばれがんばれ、ノロノロ急げーー。
池袋に来たら、ちょいと小粒の雪になっている。ホッとしたのもつかの間、あと8キロのところで幹線道路は大渋滞。カーナビ真っ赤。これはなにかあったに違いない。ノロノロ急げーー、迂回だ迂回ーー。迂回の道は雪が結構積もっている。そりゃそうだね、あんまり車走ってないんだから。滑らないように。信号よ、赤はやめてくれ、止まったら、走り出すときにスリップしそうだ。なんとかかんとか最寄駅まで来た。ホッとする。ここからなら、なにかあっても歩いて帰れる。なにかあっちゃイヤだけど。一瞬、幹線道路に出る。やっぱり大渋滞、ほとんど動いてない。50メートル進むのに10分近くかかった。カーナビはさらに真っ赤に。すぐに気をつけて左に曲がり、家に到着。ホーーーーっ、家の駐車場がみごとに真っ白。車を停めて降り立つとキシッという雪の音。東京の雪じゃねーなこれ。3分もあればそこそこの雪だるまができるくらいしっかりしとるぞーーー。娘は大喜び。物心ついて、こんな大雪は初めてのことだろう。はーーー、そういやぁ、残って飲んでるみんなは無事だろーか?電車は大丈夫だろーか? 今夜いらしてくださったお客様たちは無事に帰れただろーか?
ちょいと心配。そして明日、伝の会は名古屋に行くのだけど、新幹線は大丈夫だろーか?


2月10日(日) 長久手寄席。
長久手寄席です。楽太郎さんと喬さまと一緒です。楽太郎さんとは初対面。雪の残る名古屋駅から車で40分。長久手町文化の家 森のホールは、ステキなホールでした。楽太郎さん、喬さまとやって中入り。休憩あけに伝の会です。いやいや、お客様があったかいあったかい。喬さまが盛り上げた余韻たっぷりで。楽しい舞台ができました。トリは楽太郎さん。無事に終演して、お客様と長久手で食事をして、邦さんは東京へ、僕は新神戸へやってきたのです。明日こっちで仕事があるので。松永の皆と合流。名古屋でも飲み、新神戸に来ても飲む。明日大丈夫かーー。


2月11日(月) 豊田~神戸。
昨夜、長久手の「美舟」ふぐ料理を食べた。いやいや、久々にふぐ、フグ。おいしかったのなんのって。もう一生、お腹が空かないんじゃないかと思うくらい食べた。フグの前にイカが出てきましたよ、透明の、獲れたてですなぁ。その勢いで神戸に来て、飲んで騒いでるうちに、立派にお腹が空き、夜中にラーメンという王道を通りましたね。

そして11日。むくんだ顔で目が覚めた。良い天気の新神戸。「老舗料亭旅館いさご」で、和三千津師匠のお弾き初めの会。10時半から始まった会は、18時に終わり、只今宴会。あー、お腹減ったー。まぁ、宴会というといろいろやりますわな。僕は、なーんにも出来ないんですがね。そのうちご指名でなんかやらされたりしますね。なーんにもしない僕は、最後の締めの挨拶をさせられましたね。やっぱりなんかしないといけないのですね。だけど僕にマイクを持たせると長いですね。そして挨拶の最後は全員に起立してもらって手締めになりますね。いつから私、こんなに手締めの段取りがうまくなったのかは不明ですが、自分でも感心するくらいに良い流れで手締めに持っていけますね。では、ともかく、ヨーーーッ!
宴会後、三ノ宮で二次会。最後のラーメン屋を出たのは何時だったのだろ? さすがに疲れた。へとへとだ。部屋に帰る。とにかく寝る。



2月13日(水) 浜松。
9時には迎えが来て、仕事仕事。
うなぎを食べて、ゴルフの練習場へ。
ほんと、鉄九郎の世話役は素晴らしくスケジュールを管理してくれている。
午後からお稽古開始。


2月14日(木) 浜松~東京。
10時に豊田からお客様が来ると言うので、やっぱり早起き。朝のうちチラチラと雪が舞ってる浜松です。お客様と打ち合わせをしている間に陽が差してきてポカポカになる。夜に東京に戻ってきた。 明日は夕方までのんびりできるなぁ、とホッとしていると、
娘「明日さぁ、授業参観だよ」
テ「なにっ!」
娘「図工がいいな」
テ「何時からだ?」
娘「三時間目」
テ「何時からだ?」
娘「三時間目」
テ「何時からだ?」
娘「三時間目」
テ「・・・・ずっと続けるか?」
娘「ちょっと待ってね」
テ「・・・・」
娘「・・・あっ、10時45分から」
テ「はい」



2月20日(水) 那覇。
沖縄と言うところに初めて行ったのは、松竹歌舞伎の公演だった。菊五郎丈・左団次丈だったと思う。20年くらい前かなぁ?それからぐっと時は流れ、2002年の中国ツアーの時に新良幸人さん、サンデーと知り合い、2004年にジョイントツアーで訪れた。沖縄に伝の会っていうのが意外に面白く、ここで何かが出来そうな気がしている。伝の会の定期ライヴは絶対に実現していきたい。まぁ、すでに3回やってるんだけど。この後もね、ちょくちょくとね。そんなことで動いている間に、今月から稽古もするようになったのだ。しましょしましょ。ということで、那覇にやってきました。


2月21日(木) 羽田空港はカレーの香り。
フーっ、よく寝た。でもそんなに長い時間寝たわけではない。沖縄はゆっくりと時間が過ぎる。スカッと目が覚めるあたりは気持ちが良い。昨日の朝、羽田でね、カレーが食べたかったのです、むしょーに。食べられなかったのです。なぜかという話を今からします。20日の朝、空港に向かうために、ちょいと早めに出た私は、いつものように、どこかの駅で、おそばを食べようと決めていました。大抵、どっかでおそばを食べる、空港に着く、そのまま搭乗、って感じなんです。でね、地下鉄を降りてJRのホームに着いたらね、人がたくさんいたのです。そんなに混まない時間なのに。どうやら人身事故のようです。田町と浜松町の間で人身事故。んんん、アタシャこれから浜松町へ行くのよ。なんかやばい。でもね、山手線の電車は田端まで来てるんですって。ここは有楽町だからね、あと18分したら来るってことです。でね、反対のホームは京浜東北線なのです。こっちでも浜松町には行けるのです。こっちはね、隣の東京駅で止まってるっていうのさ。どっちが先に来るのよ。というより、ちゃんと来るのか?今、田端からこっちに向かってる山手線だって、東京駅で止まっちゃうんじゃないの?
大丈夫?ちゃんと来るの?それに、来ても、浜松町まで行ってくれるの?新橋までってことない?大丈夫なん?「地下鉄に振替を行っていまーす」おっおっ、やばくない?でもなぁ、今から、タクシー乗ってなぁ、浜松町まで行っても時間かかるんじゃないのかなぁ?「山手線は上野に到着いたしましたーー」おっ、そのまんま来てくれよ、止まったらイカンよイカンよー。「京浜東北線は、お隣の東京駅に止まっておりまーす」早よ、動けよーーー、京浜東北線ーー、せめて浜松町まで行って待機しよーじゃないの、ね、そーしよ。周りの人は意外にのんびりしている。まぁ、朝早いし、ラッシュ時じゃないからかなぁ。うーー、吹きっさらしのホームは寒い。あ、そっか、皆寒くて固まってるんだ、心はあせっているはず、うむうむ。などと、うなずいてる場合じゃないぞー。飛行機大丈夫か?間に合うか?うーーーむ。すると、突然に、京浜東北線のホームに電車がやってきたのであります。コラーーっ、東京駅を出発したんならしたと放送せんかーい。ま、来たからいいけど、だーれも怒んないけろ。ワーイ、乗れ乗れーーー、そして動けーー、頼む浜松町まで行ってちょーーー。ガタコーンガタコーン。
走り出したねーー、よっ、いいぞっ! ブルートレインっ! よっ、行きましょ、旦那っ! ガツーンと、止まらずに、ひとつ、ね。
「しんばしーー、しんばしーーー」
はいはいはい、乗ってくださいよ、そして走りだしましょ。頼むよ、よいしょっと! ガタコーン。 よっしゃーーー、行けーーー、そのまま、浜松町までーーー、ゆけーーーー、東京と横浜を結ぶ東北の電車ーーー、なんちゅーネーミングやーーー、がんばれーーー、これから贔屓にするさかいにーーー。ヤッターー、「はままっちょー」なのね、「はままつちょー」ではないのね、ヨッシャー着いたでーーー、走れ走れーーー、ツワモノどもよーーー、羽田に向かう者ガンバレーー、ガラガラ引っ張ってーーー。タッタッタッーーー、とにかくチェックインでっせーーー。
♪オー、ジャル、ジャールジャルジャルジャルジャーールー(沢田研二「OH!ギャル」参照)
さて、私の乗る飛行機会社はJALでしょうか?浜松町に来たのだから、まずはチェックインなのらーーー。シャキーーン、チェックイン完了。あっはははははー、これで大丈夫。絶対に乗れるのらーーー、あっはっははははーー。さーて、モノレールじゃーい。止まっちゃいねーだろーなぁ。なにせ、以前、モノレールが止まって、飛行機に乗りそこなったことがある。階段を駆け上がる。ジャーン、モノレール、順調に動いてます。ヨッシャーー、はいはいはいーー、乗って乗って乗ってーー。
♪乗って乗って乗って乗って乗って、走って走って走って走ーーるーぅぅぅぅぅー(円広志「夢想花」参照)
はぁはぁはあーーーー、しかし、なんだか疲れたーー。そりゃ疲れるわい。睡眠不足でちょいと二日酔い(スクハジの打ち上げで鉄六が俺にジャンジャンビールを注いでいた映像が蘇る)で、心配して早足で歩いて。「第一ターミナルでーーす」さぁ、着いた着いた。大丈夫、ただいま20分前。間に合ったーーー、おっ、カレーの匂いだーーー。そうなのです。皆さんも経験がありませんか? 羽田空港に着いた途端にカレーの匂いがして、カレーが食べたくなったということが。僕はあります、きっぱり、というか毎回です。来るたんび。または、空港に帰ってくるたんび。たんびたんびに思ってますよ。 実際に食べちゃうときだってありますよ。
♪たんびたんびたんびたんびたんびたんびたんびーー。
うーん、どこで食べようかーなー??? ま、いいか、とにかく、手荷物検査場というのか、身体検査場というのかわからんが、とにかく「チケット見せて安全な荷物と健全な身体じゃん飛行機乗っていいぞお前」っていう判断を下すところを通ってしまおう。スーッと通ってゲートまで行く間のテキトーな所でカレー食ーべよっと。ピンポーン。なにっ!
係「お客様、ベルトしてらっしゃいますか?」
テ「うん、いつもしてます」
係「はずしてもう一度通っていただけますか?」
テ「はずすのはいいがズボンが下がるぞ」
係のお姉さんがキョトンとした顔をしている。
「ズボンが下がる」という表現にキョトンとしているのか?
「ズボン」という言葉か?
係「ありがとうございました」
テ「はいはい」
なんだよ、いっつもこの格好で通っててピンポンなんて鳴ったことないのにー、うーん、カレーが食べたいのにー。
係「お客様ー、このバッグはお客様のですか?」
テ「あ、はい、そうでござるが」
係「貴殿のバッグの中にライターが二つあると出ておりますが」
テ「なにっ!我が皮袋に火付け機がリャンコも入っているというのか」
係「さよーでございまする」
テ「どのへんじゃ?」
係「このあたりかと」
テ「うむ・・ガサゴソガサゴソ」
係「ジロジロジロ」
テ「おおおっ、見事じゃ、確かに、我が皮袋の中より火付け機がリャンコ出ておじゃった」
係「機内にはひとつしか持参できませんが」
テ「承知しておる」
係「では」
テ「うむ。で、どちらの火付け機が好みじゃ」
係「おたわむれを。それは貴殿がお決めになること」
テ「うむ、ガスの少ない方を置いていきたいのう」
係「さようで、しかし、どちらも透明ではない故に、ガスの多い少ないが計り知れませんな」
テ「うーーむ、困ったことじゃのう」
係「お急ぎくだされよ、貴殿の乗るジェット機は、まもなく旅立ちでござるぞよ」
テ「な、なにっっっ!うーーーむ、カレーを食したい」
係「なんと言われた?」
テ「カレーが食べたいと言うたのじゃ」
係「ご乱心か!カレーではござらぬぞ、ライターでござるぞ!」
テ「うううーむ、では目をつむって、どちらかを選ぶ」
係「そうなされよ」
テ「ヒシッ、こっちじゃ」
係「おお、よくぞお見極めなされた、かたじけのうござる」
テ「うむ、さらばじゃ」
係「お気をつけて」
うーーーむ、カレーを食わずに時間を食った。まぁいい、まだ大丈夫だ。あと10分近くある。ササッと食べれば間に合う。いつも間に合っているのだ。11番ゲート近くのいつも行くお店へ、早足で。うーむ、早足は暑い。カレーを食べずに暑い思いをしている。ガーーーン。なんだこの長蛇の列は!いっっっつもここは空いてるのに! おっかしーぞーー。ここが混んでることなど考えられないのにっ! うーーーむ。並ぶかぁぁぁ。
「沖縄行き〇〇〇便は最終のご案内を・・・」
うーーーーー、無念じゃーー。時間切れじゃーーー。カレーが食べたかったーーー。 無念。シーーーン。その思いのまま飛行機に乗る。客室乗務員のお姉さまと
「お飲みものは何になさいますか?」
「カレーを」
という会話をしたかしなかったかはわかりませんが、そんなカレーな思いのまま沖縄に来て、カレーが食べたいと言いながらトンカツを食べ、カレーがなぁと思いながらおそばを食べて昨日が終わったのでした。

はーー、語った、長かった。ということで、私は21日の朝、起きたときからカレーが食べたかったのです。帰りの飛行機に乗る前に何かを食べるとすれば、それはカレーだったのです。そして、その思いを遂げて機内に入り、飛び立ったことを確認して眠りに就きました。起きたら、もうすぐ着陸というところ。そして無事に降機。ただいま15時ちょいすぎ。いそげーーー。17時には自宅にお客さんが来るーーー。走る走る。モノレールの中も走る。(嘘) 山手線も走る。(そう) 僕も走る。(ウソ) なんで急いでいるかと言うと、取材のようなものがあるのです。

月刊『日本語』という雑誌があるのだそうです。その中で「日本文化体験記」というコーナーがあって、韓国の女の子(ミジンちゃん)が日本の様々な文化に触れるという内容なのです。わかりやすい企画ですね、こういうのが良い。今まで14回くらい続いているんだそうです。陶芸したり、空手やったり、お琴弾いたり、日舞踊ったりね。今回は、三味線を習うという企画で、それで僕んとこに来ることになったのです。ね、だから、なんとしてもミジンちゃんたちより先に自宅に着いてなければイカンのです。(当たり前やろが)途中で、担当のディレクターさんにメールします。
「あと40分で自宅に着けそうです」
返事が帰ってきます。
「お忙しいところすみません。よろしくお願いします。」
とても感じが良いですね。ヨッシャー、自宅に着いたーー。しばらくしてミジンちゃんたちも到着。(気安く呼んでいるが初対面)段取り決めて、はい撮影撮影。バチの持ち方ね、三味線の構えね、等々、昨日、那覇でやってきたようなことをやり、ドンドン進んでいく。え?楽器が珍しい?じゃ、おさえとく?物撮りしとく?
なに?譜面が興味深い?はいはい、物撮り物撮り。はーーい、無事に終了。そこへ、来客。この仕事を持ってきてくれた友達のくわっちゃん。ガテマラから直行で家に来た、偶然。
テ「ホラホラ、くわっちゃんが紹介してくれた雑誌の撮影、今やってたんだよ」
く「え?ああ、ははは」
ディ「ええっ?ガテマラ帰りなんですか?そして先生は沖縄帰りーー?」
テ「はい、今、娘にでんぐりがえりをさせます」
娘「しないがな!」
ということで、なんだかんだと終了ーーーー。ふーーー、終わったぞい。日記が。いやいや、一日が。


2月24日(日) 都丸師匠の三十周年 南座。
なにっ! 強風でダイヤが乱れてるって? 只今、24日の午前11時。木曜日の「笑っていいとも」で志の輔さんを見損なった僕は、「笑っていいとも増刊号」で見ようとしたが、なんだか見られず、戸隠のお蕎麦をゆでて食べ終わったとこ。ソファのとなりには伽羅(雌猫)が寝っころがり、目の前では宇太(雄猫)が真剣に寝ている。今日はこれから京都南座に行くことにしている。桂都丸さんの三十周年の落語会なのだ。
都丸さんは伝の会を可愛がってくださっている。(2006年7月31日、2007年11月7日参照)
邦さんも京都のお稽古の合間に楽屋に行くと言っているので、「じゃ、二人揃ってご挨拶に行きましょう」ということになっている。しかも、今日の会のゲストが志の輔さんと鶴瓶さん。なになになにっ、縁(エンと書いてユカリと読む)の方たちではないか! 「そりゃあ、行かないわけにはイカンでしょー」と巷(ミナトみたいな字を書いてチマタと読むそうな)の声が聞えてくるではないですか。私、邦さんのように、京都のお稽古と一緒にできなかった。ただただ、南座を往復するのだ。ま、それも楽しいんですけどね。 邦さんとの集合時間は16時。ボヤーっと13時すぎくらいの新幹線に乗ろうかなぁ?などと思っていたところに、冒頭の情報が入ってきたのです。さーて、うーーむ、いやいや、考えても仕方がないっしょ。そろそろ行動に起こさなけりゃイカンでしょ。どーしよーかなーーー?そろそろ支度しなきゃなーーー。もたもたもたもたもたもたーーーー。もたもたするなーー!シャキっとせー、シャキッとーーー。また長文になる気配だぞーーー。読んでる方の「また長いよ!」という声がボチボチ聞えてきてるぞーー。とにかく支度を。いつものジーンズ姿ではいけないな。なにせ、三十周年のおめでたい会だからな。
スーツかなぁ?ちと大仰だなぁ。とにかくセーターにズボンという出で立ちに、志の輔さんから「悪魔のコート」と呼ばれているトンビを羽織って出発らーー。ビューーーーウッッッ、さ、さ、さむーーーーい! 甘くみていたのか、強風をっっっ!とにかく、俺の人生、前進のみだ。厚着をするために家に引き返すことは出来ない。引き返すときは、財布を忘れたときのみだ。そっか、財布を忘れていれば、家に引き返すことができるんだな。えっと、財布財布。ううっ、立ち止まると強風に持ってかれそーだ。(何を?)う、か、からだがーーーと、伸ばした手がハッシと握っているのは財布ではありませぬか。ピューーーーー、うううぬ、財布は持ってござったか、ならば引き返すことなどできませんぞよ。ぞよぞよぞよーーーー、ビューーーーーー。 バッサバッサーーー(新聞紙が舞っている)とにかく、地下鉄の駅へーーーー、さむーーーーーい。トンビは脇のところが開いているのでそこから思いっきり風が入ってくるーーー、うーーー、さむーーい、悪魔のコートめーーーーー。テッテッテッテッ。ふーー、駅に入ってしまえばなんのそのだ。 ふーー、あったかいぞよ。よしよし、大丈夫大丈夫。さ、地下鉄にのーろうっと。おおお、掲示板が出ている、なになに?
「強風のためにダイヤが乱れています」
おおお、どこぞで見た文である。・・・・・あ、冒頭か。地下鉄も遅れているのかぁ。地下鉄は地下を走ってんじゃないの?地下に風が吹くの?ね、どーなのよ、ねーー?しっかりしろ、大人の解釈をするのだ。決して「大人の介錯」ではないぞ。まぁいいじゃないか、この地下鉄、どっかで地上に出ていると思ってもよし。テッテッテッ、ホームに人影は少ない。日曜のお昼なのに、こんなに人がいなくていいのか?今日はみんな出ないか、この風じゃな。池袋から丸の内線で東京駅へ。わかったことは、ダイヤは乱れているけど、どこぞで止まったりはしなかったってこと。さて、東京駅に着いた。新幹線も強風の影響でダイヤが乱れている可能性は大。ちゃーんと掲示板が出ていましたよん。「名古屋~新大阪間、雪のためにダイヤが乱れております」うぬっ! 現在は新大阪着が20分遅れとのこと。かるーく考えると13時の新幹線に乗っても京都駅に着くのが16時ちょいと前って感じかぁ。16時の邦さんとの集合にちょいと遅刻だなぁ。ま、いいか。いいも悪いもないか。とにかく今乗れる一番近い時間のヤツに乗りまひょ。案外簡単に指定が取れた。いいぞいいぞーー。さて、新幹線のホームに。ビューーーーー、-------。。。な、なんじゃーーー、この風はーーー。
さらに強風になっとるじゃないかーーーー。 のぞみよーーーー、はやくこーーーーい!きたきたきたーーーーー、ビューーーーーー。どっこいしょっと。座ってしまえばなんのその、はははは、コート脱いでっと。そんなに暖かい車内ではないが、今は身体が冷え切ってるから寒いと感じるのだろう。ZZZーZZZーーーZZZZ-----。うーーーーん。どこだーーー? おおおっ!窓の外を見てびっくりした。真っ白じゃ、真っ白じゃーーー。おお、雪じゃ雪じゃーーー。どうやら名古屋~京都の間のようだ。思いのほかスキッとしている。当たり前だろ、2時間も寝てたんだから。「タンタタンタタンタタンタタンタタンタタン、タンタタンタタンタタンタタンタタンタタン、ピロロロンッ! まもなく京都、きょーとでございまーす」
降りるぞ降りるぞ。
「この、のぞみ号は定刻に京都に到着いたします。て・い・こ・くにとーちゃくです」
おおおっ、いばった感じだな。20分遅れそうだから覚悟しておけと言っていたが、どんなもんだい、遅れなかったぜぃってことだな。プシューーー 。ドアが開いた。強風の準備だーーー、身体を硬くしてーーー。チラチラチラチラーーー、おおおおっ、なんじゃ、この白いものは! うぬっ、雪じゃ、雪がちらついてる。雪だろな、どっかでドラム缶で紙もやしてんじゃないよな。おお、雪がチラチラ、よござんす。うんうん、いいねいいね。ははははは。
テ「もしもし、ははははは、邦ちゃーん、雪じゃーん、京都雪じゃーん」
邦「どこにいるんだ?」
テ「『きょーとゆき』、あはははは、『きょーとえき』に降り立ったとこよーーー」
邦「おおそっか、今俺、南座向かってるから」
テ「あいよ、じゃ、俺もこのまま向かうわ」
チラチラチラ(雪です)なぜか、南座正面で待ち合わせして、楽屋口へ。
テ「こんちはー」

「あらっ、今日は?」
楽屋入り口のお姉さんがびっくりしている。 そりゃそうだ。歌舞伎でもないのに顔を出した長唄さん二人。でもお姉さんはあることに気がついた。
お姉さんの心の声「そうだ、この人、てつくろって言ったっけな?そうだ、この人、長唄さんだけど11月の『鶴瓶のらくだ』ん時いた。そうよそうよ、この人鶴瓶さんと知り合いなのよ、きっとそうよ。ほんとは長唄さんじゃないのかも知れない、だって今年の1月、ここで前進座歌舞伎があったけどいなかったもの。昨年はいたのに、今年はいなかったわ。長唄さんじゃないんだきっと。・・・じゃ何かしら?営業の人にはみえないし、だっていっつもテキトーな格好してるから。付き人?・・・うーん それにしては態度がデカイわ。偉い人?・・・それは違う。それは無い、絶対に無い。うーーん、ご贔屓さんかしら?誰の?鶴瓶さんの?だとしたら一方的にファンなんでしょね、あーあかわいそーな鶴瓶さん、こんな釣り目の人に追い掛け回されて、いやとは言えないんだわ、あーあ、帰しちゃおうかしら『鶴瓶さんはいません』って言って、でもそんなこと出来ないわよね、うーん、どーしよーかなぁ?あ、勝手に入って行ってる。部屋割り見てるわ、どーしよ、このままじゃたどり着かれちゃうわよ。ん?待って、あの後ろの恰幅のいい人はおだやかそうな顔をしてるわ。どっかで見たことあるなー、長唄さんかなぁぁ?役者さんかしらん?なんかやさしそー、心が大きそう。
それに比べて、あのマントで釣り目の人はなんなの?チョコチョコとおちつきがなくってさ、エレベーターから出てきた芸妓に声かけちゃったりしてさ、やーねーそれに比べて恰幅の人は、それを見たっておだやかな微笑を浮かべてるだけだわ、なんてステキなのかしらん。そーだ、恰幅の人に鶴瓶さんの楽屋を教えてあげましょ」
テ「みなさん三階なんですね?」
姉「はい、そうです」
お姉さんの心の声「あらっ、釣り目に話しかけられて答えちゃったわ。恰幅の人に言われたかったーーーー」
テ「三階だよ」
邦「おお」
テ「あ、都丸師匠いるみたいだ」
邦「入ろうぜ」
テ「ジャーーン」
都「わっっ!どないしたん?」
邦「本日はおめでとうございます」
テ「ございます」
都「わーーーっ、ね、うれしーなー、来てくれたん。えっ?なんかあったんですやろ?」
邦「あ、僕は京都のお稽古で来たので」
都「へぇ、京都でお稽古してはるのん」
邦「そうなんです。都丸師匠のこの会に合わせちゃいました」
テ「おめでとうございます」
都「いやぁありがとー、これカミさんですのや」
邦「はじめまして、伝の会の邦寿とコイツです」
テ「はい、コイツです」
奥「いつもお世話になっております」
邦「それでは失礼いたします」
都「どうもありがとーね」
都丸師匠の楽屋の隣が鶴瓶さん、そして志の輔さん。
どちらもいない。
鶴瓶さんは高座に、志の輔さんは舞台袖だそうだ。
テ「どうしようか?」
邦「うん」
テ「僕らも舞台袖に行ってみよーか?」
邦「そーだな」
と、エレベーターが来るのを待つ。
エレベーターが上がってきた。
扉があく。
ぬーーー。
邦「その節はありがとうございました」
テ「あっ」
志「おー、邦さーん、どーしたのーー?」
邦「はい、ちょっとご挨拶に」
志「え、わざわざ?」
テ「はい僕は、わざわ・・」
志「違うんでしょ」
邦「あ、京都のお稽古で来ていて」
志「おーー、偉いなぁ、京都でお稽古してるんだー」
テ「ボ・ク・は・わ・ざ・・・」
志「大変なことだー」
邦「いえいえ、ちょっと間を抜けて」
志「そーなんですかぁ、へぇ・・・・それで邦さん、コイツはなんでここにいるの?」
邦「いや、知りませんけど」
テ「こらこらこらーー」
志「ま、おいでよ」
邦「はい、失礼しまーす」
テ「わっ、文都さーん」
文「あらっ、テッチャン。どしたのーーー」
邦「コイツ、わざわざ来たんですよ」
テ「俺に言わせてくれーーー」
志「どーして?」
テ「都丸師匠に伝の会が呼んでいただいたりしていて、お世話になっているので、ごあいさつに」
志「あー、そうなのか、コイツら、いろんなとこで世話になってるからなぁ、文都も気をつけろよー、スーッと入りこむからな(笑)」
文「はははは」
邦「はい、僕もスーッと入りこまれちゃったんです、20年前に(笑)」
志「はははは、邦さんは第一の犠牲者だな」
テ「誰が犠牲者やねんっ!志の輔師匠がいらっしゃるから来たんですよ」
志「な、これが危ないんだ」
文「はいはい、わかるよーな気がします(笑)」
志「邦さん、コーヒーどーぞ」
邦「はい、いただきます」
志「お前も飲め」
テ「はい」
ちょっと中座して鶴瓶師匠にごあいさつを。
テ「ニコッ」
鶴「おーーー、上がれ」
邦「あ、いやちょっとごあいさつを」
鶴「上がったらいいがな」
テ「では」
鶴「ははは、飲んでけ、テツクロ、何する?邦さんは?なんやねん、どーしたんや?」
テ「ええ、これこれしかじか」
鶴「そーかぁ」
テ「『いいとも』木曜日」
鶴「そうなんや志のさんやったんや、あの人スゴイでーー、そや、志のさんに言うとかな、おい一緒に来い」
ま、とにかく楽しい楽屋でして、そんな話をしながらも、全員が都丸師匠に気が行ってて、そういうとこがスゴイなぁと思いました。邦さんは稽古の途中で抜けてきたということもあり、小一時間で帰ったのですが、なんとなく僕はお邪魔していて。志の輔さんは独演会が多いので、こんなに楽屋でゆっくりしている姿を見たことがない。この日の出演順。
一、都丸
一、ざこば
一、志の輔
一、都丸
  中入り
一、鶴瓶
一、都丸
開口一番から出ていかれる都丸師匠、そして三席。なんてカッコイイんだーーー、ステキな人である。そして、その後にすぐに出ていらっしゃる都丸さんの師匠のざこば師匠。この位置もスゴイなぁ。めちゃめちゃ素晴らしい師弟だなぁ、そして鶴瓶さんと志の輔さん、すっごい男たちが集った南座。来て良かった。都丸師匠、キラキラしていた。帰りの新幹線
志「俺は酒にする」
テ「ビールですかね」
志「しゃべった俺が酒って言ってんのに?」
テ「お酒にしよっと」
志「いいよ、ビールで。じゃ、一杯ずつ飲んで酒にしよー」
テ「はい」
志「こうやってたっぷり泡を立てるのが好きなんだ」
テ「あ、僕もですよ、そのほうがウマイですからね」
気がつけば2時間数十分経ってた。
志「新幹線って酔うなぁ」
テ「揺れですかねぇ、もう、ぼくはぁ、ベロベロでっせー」
志「うーー」
テ「じゃ、師匠、またぁ、どこかれ」
志「どこかってお前」
テ「しばらくお仕事でお会いしませんからね、またどっかにとーりかかりまふよ」
志「ああ、じゃな」
ふへーーー、揺れで酔ったんじゃないなぁ、飲んだもの、ケッコー。4時間の京都だったなぁ、新幹線に乗ってるほうが長かったのかな。しかし、今日も中身の濃い一日だったーー。ふへーーー、 東京は強風でも雪でもなく、おだやかな深夜を迎えようとしている。ふーシンド。電車で途中の駅まできた。ふーーー、こっからタクシーで帰ろっと。
テ「ふへーーー」
運「寒いですねぇ、今夜は」
テ「風は止んだでしょ」
運「まだありますよー」
テ「あら、そーなの?」
運「あれっ、お客さん、お着物ですか?」
テ「いや、よーふくらよ」
運「ああ、コートが珍しいんだ、トンビですね」
テ「おおっ、運転手さん、知ってるねっ!うれしーねどーも。でもね強風は寒いよトンビは」
運「脇から寒いでしょ」
テ「おおおっ、すごいねーー、知ってるねーーー」
運「いや、そうじゃないかと思いましてね」
テ「強風の時はね、このコート、トンビって言わないんらよ」
運「えっ?そーなんですか?」
テ「うん」
運「なんて言うんです?」
テ「悪魔のコート」
運「なにお辞儀してんですか?噺家さん?」


2月26日(水)伽羅(雌猫)言 15 ながうたきょーかいえんそーかい



おはよー。
おはよーつったって、もうお昼前よ。
ボサボサの髪してなにしてんのよ。
ま、なにしてるってこともなさそーね、寝てたんでしょ。
昨夜も早く寝たんでしょ。
え?
12時間寝たって?
なによ12時間って。
一日?
違うの?
半日って何よ。
ふーん、よくわからないわ。ようするになんなのよ。
たくさん寝たってことなのね。
人間はあんまりたくさん寝ないの?
ずーっと寝続けたの?
12時間?
途中で何も食べずにずーっとっていうこと?
ふーーん、わかるようなわからないようなだわね。
『わかるようなわからないような』って、ひらがなの羅列ね。
なんかデタラメに字を並べたみたいね。
ご主人、見てみなさいよ。
ホラ、良い天気じゃなーい。
ちょっとここの窓開けてくださる?
え?『かふんしょー』
なに?
くしゃみ?
ハックショーイってやつ?
それで12時間も寝たの?
カゼ?
風邪のことね。
話からすると風っぽいけど、『具合が悪い』ってやつでしょ。
わかるわよ、なんとなくね。
アタシだってだるーい時はあるもの。
風邪ひいたの?
かふんしょーなの?
頭が痛いの?
ふーん。
出かけるんでしょ。
『ながうたきょーかいえんそうかい』?
そうかい。
キャハッ、ウケた?
笑っていいのよ。
こういうのはダメなの?
ダメなのか、
そうかい。
キャハッ、今度は笑ったでしょ?
頭痛いのね。
わかったわよ。
じゃさ、笑えるもの見せてあげるわよ。
ご主人の足元見るといいわよ、ソファの下よ。
今、ビクッとしたでしょ。
一瞬、頭痛いの忘れたでしょ。
古びたぬいぐるみじゃないのよ。
微動だにしないとこがいいわよね。
もっと近くで見てみたら?
与太よ。
テ「宇太だろ!」
与太でいいのよ。
与太が寝てんのよ。
おっそろしーでしょ。
こんなに天気が良くて陽がサンサンと降り注いでるのに、
贅沢なことよね。
こんな日差しを浴びたら、頭が痛いのもなおるわよ。
頭が痛いことを『頭痛』って言うの?
へぇ、『づつう』?『ずつう』?
どっちでもいいんでしょ?
違うの?
へんね、どっちで読んだって同じじゃない。
ふーーん、いろいろあるのね。
出かけるの?
なんかいつもと格好が違うわね。
ネクタイっていうの?
ふーーん。
じゃれたくなるわね。
もう行くの?
何時に帰ってくるの?
ま、何時って言われてもよくわかんないけど。
暗くなってからよね、どうせ。
たくさんの人と会うのね。
『仲間』っていうんでしょ。
いいわね。
うれしそうじゃない。
頭が痛くても、あっと、頭痛でも行くんだから、楽しいところなんでしょ。
年に一度なの?
へぇ、そうなの。
『年に一度』って言われてもよくわかんないけど。
誕生日みたいなもの?
ま、いいわ。
アタシはここにいるわ、もうすこし。
暖かいもの。
テ「じゃ行ってきまーす」
伽「ニャー」
テ「なんだよ、窓辺で一鳴きするだけかい。あったまっちゃうぞー。
宇太もきっとのぼせたんだぞ、だからソファカバー被って寝てんだろうよ。大丈夫か?・・・ま、いいや」
テッテッテッ・・・ガチャン、バタン!
宇「ン? ダレカヨンダカナ?」

長唄協会演奏会へ行ってきた。というより出演してきた。(なら、出演して来たとハナッから書けばいいのに)体調がよくなかったので出かける時間が遅くなった。(ほんとは猫の相手してたんじゃねーのか?)よっこらしょって感じで、足取りが重い、頭も重い。(頭がデカイからだろ)なんだかボーッとしたまんま地下鉄に乗る。うとうともできずに(そりゃ12時間も寝りゃーよ)麹町に着いた。国立劇場到着。

挨拶挨拶挨拶。長唄協会演奏会の中で一番大きな会、つまり大会なのですね。長唄協会に所属している流派の家元を中心に行われます。わかりやすく言うと、各家元が一曲ずつ演奏しますってこと、かな。一日聴いてると、長唄界が全てわかるぞ、みたいな。かなりの数の長唄人が集まる。久しぶりに会う人たちもたくさんいるわけで、楽しいのです。三七郎の師匠の三左衛門さんにも久しぶりに会う。「三左衛門さん」とは呼ばない、「サンちゃん」と呼んでいる。ちがうな「三ちゃん」だな(どっちでもエエやろ)さんちゃんは(三ちゃんやが)同い年なのだ、子年。三七郎くんも子年なので、この師弟は12歳違いの子年師弟。
テ「いつも塩ちゃん(三七郎くんのこと)に手伝ってもらって助かってるよ、ありがとう」
三「あ、志の輔さんのでしょ、こちらこそ」
てな会話があるわけですね。お弟子さんの師匠に挨拶するのです。師弟関係ってのはいいですね。三ちゃんの唄も好きなので、いつかどこかでやれたらいいなぁと思ってる。ショーゴ(六昶俉さん)さんはフラッといますね。
六「どーする?」
テ「うーん、ちょっと行く?」(飲みにということです)
六「そうするか?」
テ「でもなぁ、行っちゃうとなぁ、ここ(演奏会)が終わるより遅くなっちゃうじゃない」
六「いいじゃん」
テ「でも、だったら最後の見てやりたいじゃん」
六「あ、そーだよ、最後の女子合同にお弟子さんが出てんだから観て行きなよ」
テ「でもなぁ」
六「なんだよ」
テ「風邪っぽいんだよ」
六「なにっ、鼻声っぽいと思ったら風邪なのか!」
テ「花粉かも」
六「早く帰れ!」
くっちゃべってる間に、出番の時間になってしまい、あわてて舞台へ。「俄獅子」です。芳村伊四郎師と忠五郎師の。みなさん舞台裏でスタンバイしてました。いっけねー。
「兄さん、はしゃいでちゃいけないよ、ワキ(三味線)なんだから遅れちゃいけないよ」
はい、すみません。無事に幕が開き演奏開始。途中で何かが飛んで行ったような気がしたが。演奏終了。

俄獅子って16分くらいかな、意外にあっと言う間です。家元に対して生意気な発言だが、気持ちの良い演奏だった。ウチの家元、ステキだった、もちろん伊四郎師も。僕がワキで三枚目が和寿三郎。
和「爪がヒューッて飛んで行きましたよ」
テ「えっ?やっぱり」
和「鉄九郎さんのでしょ」
テ「あ、ほんとだ、やっぱり取れちゃったんだ」
僕は左手の人差し指につけ爪をしてるんです。その爪が取れてヒューッと飛んでいったんだそうです。気がつかなかった。でも普通気がつくぜ。自分のつけ爪なんだから。ま、これも身体の調子が悪いせいにしておこう。(ほんとは元気なんだろ)


2月27日(水)
一夜明けた今日。頭痛は治っている。良かった良かった。今日も良い天気だ。さーて、稽古日だぞーーー。針治療の王先生のとこへはいつから通い始めたのだろーか? 二年前か三年前かなぁ? ある日の治療の後、
王「これ、つけてるといい」
テ「おお」
王「はい、わたし、オーせんせ」
テ「いやいや、驚いたんですよ」
王「これ、あなた、していると、いいよ」
テ「石ですな」
王「ヒスイよ、翡翠。あなたは翡翠よ、だから、これつけるといい、王先生からのプレゼントね」
テ「へー、うれしいですねぇ、左手でいいっすか」
王「うん、左が、いいよ」
と、いただいた翡翠の腕輪、腕輪っつーのか?ブレスレットって言うのかな?ブレスレットって言うのもなぁ、とにかく、腕につけとく石。人から言われたことは信じる、純粋な心を持っている私は、恥ずかしいながらも普段からつけることにしたのであります。それ以来ずっと、とにかくどこへ行くにもつけてる。三味線弾くときは腕時計と一緒にカバンに入れておく、当たり前ですな。時計と腕輪。2月9日から名古屋・神戸・京都・浜松とまわって帰宅した。どうせ稽古やらなんやかやでつける間もないので探しもしなかった。私の場合、自慢ではないが、カバンの中にあるものがなかなか見つけられないというところがある。このときも、「あるんだろうけど見つけられないんだきっと」と思い、「時間が無いから出かけた」のである。そして翌日、また出かける時に、昨日よりはちょいと時間があったので、今度は落ち着いてゆっくりたっぷり時間をかけてカバンの中を探してみた。落ち着くことは良いことである。見事に「腕輪が無い」という事実を導き出したのである。さて、どしよ。無意識のうちにどっかに置いたのかな?この行為をバカにできない年頃だ。気がつかないうちに勝手にしまってあったりすることが日常に起こっている。置きそうなところを探すがみつからない。
今日もここで時間切れで出かける。また翌日、いよいよ腕輪が無いことに気がついた私は、まず浜松に電話をする。
テ「俺、浜松に行ったとき、腕輪してたかい?」
浜「さぁどーでしたかねぇ、してないともしてたともねぇ」
ま、そんなもんだろ。浜松で行った先々に電話して捜索してくれることになった。京都の稽古場に忘れていれば電話がかかってくるはずである。神戸か。神戸の立ち回り先に電話をする。どこもかしこも「届いておりません」の返事。そろそろ危なくなってきた。私の脳裏には「失くした」という文字がうっすらと浮かんできたのである。あの腕輪を失くしたと思うとショックが大きい。王先生にいただいた大切な腕輪だし。でもこうとも考えられる。「身代わりになったのだ」なにかの事故に遭うはずだったのに、あの腕輪が身代わりになってくれたんだ。そーだそーだ、そう考えよっと。王先生もきっと「みがわりになったのよ」と言ってくれるに決まっているわい。 はー、気が楽になった。そして数日後、浜松から電話が。
浜「せんせーの腕輪が見つかりましたよ。これですか?」
テ「おおおお、それだそれーーー、なにっ!どこから?」
浜「ゴルフの練習に行くときに乗ったお弟子さんの車の助手席から」
テ「おおおっ!」
なんというとこから見つかったのだ。そのお弟子さんはゴルフ練習場に聞いてくれたりしていたんだが、その数日後に助手席に乗っている腕輪に気づいたそうな。「まさか、助手席にあるとは思わないにー」って言ってたそうな。へぇ、見つかったんだぁ、いやいや良かった良かった。そして今日、その腕輪が送られてきた。めでたく手元に戻ってきた腕輪。という話をお弟子さんにして「この腕輪なんだ」と見せたところ、「私のに似てる」とお弟子さんがバッグから出した腕輪。ぬぬぬぬ、似てるどこの騒ぎじゃないやん。同じやん。 王先生からもらったの? な、わきゃあないか。そのお弟子さんもお友達からいただいたそうな。うーん、こんなことってあるのかぁ。このお弟子さんは最近入ったお弟子さん。うーーむ、この腕輪を持つ人たちが、この稽古場に集まるのかぁ? 八犬伝かっっっ!


2月28日(木)京都
京都に行く僕が一番最初に家を出発するんだろうなぁ、と、なんの疑いもなく思っていた朝。妻が「ほなっ!」と言って出かけた。おお、早いなぁ、まだ7時ちょいだぜっ!「じゃ、また明日ねっ!」と娘が小学校に出かけようとする。
テ「おいおい、まだ早いだろー」
娘「朝練なんだよー、明日はいるの?」
テ「ああ、明日には帰ってくる」
娘「夕方には、いるね」
テ「ああ、よく知ってるな」
娘「パパのスケジュール見たのよ、ほなっ!」
母親ゆずりの「ほなっ!」と言い残して走っていった。


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